フィリピンで AI 通訳機「ポケトーク」は使えるのか、現地で英語混じりのフィリピノ語(タガログ語)を翻訳したのでレビューします。グローバル通信は今回未検証ですが Wi-Fi モバイルルーターの通信状況から考察したのでご参考ください。
検証したのは2023年3月中旬、フィリピンに出張した私の友人 N 君です。私自身は検証していませんが、帰国直後に「とても便利だった」と興奮気味な彼から詳しく聞いたので実情に近い情報になっていると思います。(興奮と冷静な私の間 → 平静)
フィリピンならではの事情を踏まえ、フィードバックの中で「ポケトークの便利な使い方」が見えてきたので、そちらについても紹介します。
- 英語混じりのフィリピノ語もきちんと日本語に翻訳する
- ショッピングモールなど人が多い場所では通信が不安定
- ポケトークの使い方を共有する必要がある
- 相手に使ってもらうと会話がスムーズ
- スマホのようにひったくられる危険が少ない

1. 翻訳精度
今回使用したのは上の画像、ポケトークS シャア版 です。筆者所有のものを使ってもらいました。
ポケトークはフィリピノ語(タガログ語)に対応、音声入力とカメラ翻訳のどちらも翻訳結果を音声とテキストで出力できます。
AI 通訳機ポケトーク対応言語一覧(2023年2月現在)
カメラ翻訳対応言語一覧(2019年11月現在)
N 本君によると、ポケトークによる日本語とフィリピノ語の翻訳精度は「双方向で短文であれば問題ない」とのこと。
彼のフィリピノ語はあいさつレベル、英語は苦手でジェスチャーを交えて何とかなレベルですが、ポケトークを使うと十分に意思疎通できたようです。
- 短文であれば問題なし
→ 夜の街でも - 英語混じりのフィリピノ語もきちんと日本語に翻訳する
- 設定は[フィリピノ語 ⇄ 日本語]で OK
「英語混じりのフィリピノ語もきちんと日本語に翻訳した」そうで、これには私も驚きました。設定は2週間の滞在中[フィリピノ語 ⇄ 日本語]のままで、英語に設定する必要はなかったそうです。
西本君は英語も翻訳された原因を「英単語が混じったフィリピノ語だからかも」と言っていました。日本語でいうとカタカナ語をミックスしてトゥギャザーするフィーリングですね。英語はフィリピンの公用語でもあるので日本よりもミックス率は高そうです。
しかしながら、滞在中のやり取りではきちんと翻訳されたので「フィリピンでは十分な翻訳精度で使える」と感じたようです。
公用語とはいえ英語があまり得意でない人もいるようなので、話者によって設定を変更しなくていいのは便利です。
ポケトークの翻訳精度は低い?
DeepL や Google翻訳などを利用しているとポケトークの翻訳精度は低く感じると思います。私もポケトークの翻訳はぎこちなく感じています。
しかし、それは DeepL の翻訳がより自然でこなれているからだと思います。翻訳が正しいかどうかでいうと、ポケトークも十分な精度だと感じています。なお、DeepL は AI がこじらせたのか、たまにおかしな方向で翻訳することがありますね。

2. 通信状況
フィリピン出張5回の経験がある西本君によると、フィリピンでのインターネットの通信状況は「場所による」ようです。
今回は新型コロナ流行の影響で3年ぶりの出張。以前よりも通信状況は改善されて YouTube は高画質で見れるようになったようです。とはいえ、傾向は同じだそうです。
繋がりづらかったり遅かったりするのは次のような場所とのこと。
- 人が多いところ
→ 街中の混雑したレストラン、ショッピングモールなど - 街の中心部から離れたところ
今回ポケトークを使用した場所はカルモナの工業団地にある会社のみ。現地契約 SIM を挿した Wi-Fi モバイルルーターとの接続で通信は問題なかったようです。
電波の強度はキャリアによって地域差があるらしいので、この手の詳しい現地情報がないとキャリアガチャな状況になるとのこと。
グローバル通信でフィリピンでもそのまま使える
ポケトークにはグローバル通信(2年)がついています。フィリピンにも対応しているので初回の設定をすれば現地でそのまま使えます。
内蔵グローバルSIMの対応国と地域一覧(2022年5月現在)
なお、グローバル通信は延長できます( 通信の延長 )。延長期限が過ぎた場合は「グローバル SIM カード」を購入して本体に装着すると使えます( 詳細 )。
今回、グローバル通信は未検証でしたが、こちらもどのキャリアの電波を掴むかは分からないので(サポートに聞けば教えてくれるかも?)電波ガチャになりそうです。
キャリアガチャのリスクを低減するならグローバル通信だけでなく Wi-Fi モバイルルーターやテザリングを併用するとよいでしょう。ポケトークは Wi-Fi 接続が切れると自動的にグローバル通信に切り替わるのが理由です。
現地 SIM が無理なら?
現地で SIM 契約するのが難しい場合は以下の方法がおすすめです。
楽天モバイル は2GBまでならそのまま海外でも無料で利用できます(2023年3月時点、参照)。楽天モバイルの SIM カードをモバイルルーターに挿せば、手持ちのスマホもポケトークも Wi-Fi でネット接続できるようになります。
西本君も現地到着の直後はこのスタイルで使っています。空港ですぐに現地スタッフとやり取りをするためだそうです。
楽天モバイルはテザリングが利用できるのでモバイルルーターは必須ではありませんが、メインキャリアとして楽天モバイルが使いづらい方には便利な方法です。
SIM フリーのモバイルルーターは、例えばこちら。

楽天モバイルは3GBまでなら月額1,078円、月額3,278円でデータ無制限なので、海外だけでなく日本国内での日常使いにも便利なスタイルです。
グローバルWiFi は海外でインターネットが利用できる Wi-Fi ルーターのレンタルサービスです。ネットで申し込み、空港で受け取りと返却ができるので手軽で便利です。しかも、ポケトークのレンタルオプションもあります。現地で SIM 契約するのが難しい方に便利です。
サイトでは簡単に料金シミュレーションができるので試してみてください。
ポケトークを Wi-Fi に接続する方法
ポケトークは以下の方法で Wi-Fi に接続できます。
- 自宅の Wi-Fi に接続する
- スマートフォンなどの Wi-Fi テザリング機能を使って接続する
- Wi-Fiモバイルルーターに接続する
- 公衆無線 LAN(無線 LAN スポット、Wi-Fi スポット、フリースポット、ホットスポットなど)に接続する
※接続にアプリが必要な Wi-Fi では利用できない
※ブラウザ認証が必要な Wi-Fi では利用できない場合がある

3. 会話での問題点
実際に使ってみると、ポケトークというよりは翻訳機を介しての会話に問題を感じたようです。
- 翻訳機だと伝えると水を得た魚のように話し出す
→ 翻訳が追いつかなくなる - 使い方を教えるのが難しい
- テンポよく会話できない
- きちんと翻訳されているかちょっと不安
フィリピン人の国民性なのか翻訳機を使った経験がないからか、ポケトークを見せて翻訳機だと伝えると、途端に早口になり長文で話し出す人が多かったようです。
ポケトークは長文にも対応していますが、さすがに限度があります。ポケトークに限らず音声での自動翻訳は短文でゆっくり話さないと精度が下がりますが、そのことを知らない人が多いのかもしれません。あるいは専用機だから早口長文でもきちんと訳せると思ったのか。
そんな相手に「短くゆっくり話して」と伝えるのは難しかったようですし、ポケトークの使い方(ボタンを押しながら音声入力、ボタンを離して翻訳)を教えるのも難しかったようです。確かに、ベラベラと喋り続ける相手にそのような事情を伝えるのは想像するだけで諦めたくなります。
これを防ぐには、まずは翻訳機だということは伏せて、自分が使ってみせるといいかもしれません。ゆっくりと話し、ボタン操作が見えるようにすると分かってもらえそうです。
ポケトークには ハンズフリー翻訳β もありますが、このような事情で今回は利用しなかったとのことです。なお、ハンズフリー翻訳βでは翻訳後に音声出力されないので利用しづらいかもしれません。
翻訳機ではどうしても翻訳に時間がかかるのでテンポよく会話ができない問題があります。とはいえ、自分ができない言語ではそもそも会話ができないのでポケトーク様様です。
また、きちんと翻訳されているかという不安はあったようです。これもポケトークに限らず翻訳機での会話に付きまとう不安ですね。そのため仕事でのセンシティブなやり取りには使わなかったとのことですが、オフでの会話では安心して使えたようです。
